牡蠣フライとロースかつ

元来揚げ物も肉の脂身もあまり得意でないのだが、東海林さだおの本を読んでいたら無性にロースかつが食べたくなった。サクっとして、端っこがちょっとカリカリしてて、齧ると脂身のくにっとした感じのするロースかつ。

矢も盾もたまらなくなって、おなかペコペコで駅前のとんかつ屋に急行した。

メニューをみると、おっと、もう牡蠣フライが出ている。私は揚げ物はだめでも例外的に牡蠣フライは大好きなのだ。でもロースかつも食べたい。見ると、「かき・ロース定食」というセットメニューがあったので、(量が多いかしら)と悩みつつも、ついこれを注文した。

出てきたものは、半分くらいのサイズのロースかつに、大振りの牡蠣フライ3個。普通サイズのロースかつに牡蠣フライ1個くらいのものを想像していたから、牡蠣好きな私にはうれしい誤算である。

フライのほかには、不自然な緑色をしたきゅうりの漬物と、不自然な黄色をしたタクアンと、豆腐とネギの味噌汁。そして、どんぶりみたいな大きなサイズの茶碗にたっぷりのご飯。しまった、「ご飯軽めにしてください」って言うの忘れてた。(この店に来ると毎回同じ過ちを繰り返す)

まず、牡蠣フライの1個にはソースもタルタルソースもつけず、レモンだけを絞ってがぶり、と噛み付く。
ジュワー。
衣にくるまれた牡蠣の身に充満していたエキスが口の中にほとばしる。滋味深いような、ちょっと磯臭いような香り。うーん、幸せ。

キャベツとご飯でちょっと口直しして、今度はソースをちょっとかけたロースかつを一口。
サクっとした衣につつまれた、わりとしっかりした豚肉。思ったより脂身はないが、やはりちょっと脂っこい。ご飯を軽く一口食べようとして、(いや、このペースでは先におかずを食べきってしまうぞ)と思い直して、大きく一口、口中がご飯で一杯になるくらいに頬張った。カツで脂っこかった口の中がご飯で綺麗にされて、さっぱりした。脂とソースと揚げたパン粉にまみれたご飯が喉元を通過するときの、喉越しが良い。口いっぱいの温かい白いご飯が一瞬喉に詰まりそうになって、普段刺激されることのないその辺の筋肉を刺激しつつ通り過ぎていく感じが気持ちいい。キャベツの千切りも口の中がさっぱりするが、白いご飯の、全てを受け止めて昇華させていく感じもすごいなあ。ご飯のパワーを見直した。


その後も、牡蠣フライ→ご飯→キャベツ→カツ→ご飯→キャベツ とローテーションを重ねて綺麗に完食。満腹。げふー。若干の「やってしまった」感あり(午後は仕事にならない危険もあり)。ただ、いつもそんなに大食なわけではなくても、たまには腹が苦しいほど食べて胃袋を広げよ、というのは Hamazo 家の家訓だからして、ご先祖様も満足であろう。