筍とフキ

子供のころ、春の味といえば筍とフキの煮物だった。
ある意味地味なおかずだし、大人になって自分では面倒くさくてあまり作ることがなかったのだけれど、最近の菜食ブームにより我が家の食卓に子供のころの味が再現されることになった。

自分で作ってみて初めて分かったけど、筍とフキの煮物はひたすら下ごしらえの料理だ。
まず筍は、前日に米ぬかと鷹のつめを入れて大鍋でくつくつ1時間ばかりも茹でて、そのまま一晩冷ましておく。
フキの方は適当な長さに切って塩で板ずりし、茹でて水にさらして皮を剥いておく。
この下ごしらえだけは少々手間だけれど、ここまでできてればあとは薄口醤油で調味したカツオ昆布出汁で筍をしばらく煮て、さいごにフキを入れてさっと煮れば出来上がり。面倒くさいからといって水煮の筍で作るとちっとも美味しくない。きっと実家の母も私が子供のころに、こうして作ってくれたのだろうな、と思う。

週末に友人と花見に行くことになったので、数ヶ月前に正月用品セールで衝動買いした安売りの重箱を出してきた。桜模様なのでぜひ美々しい弁当を作ってもって花見に行きたいと計画していたのだが...昨今のお仕事状況により疲弊してその気力がなかった。
やっとのことでつくった筍とフキと高野豆腐の煮物をつめて、一段。
あとは、肉肉星人(かーちゃんではない)対策に、簡単なチャーシューを作って二段目。三段目に入れるものがなくて、筍の姫皮のごまあえと、ありあわせのカブを塩もみにして梅で和えたのと...ちょっとスカスカな感じで残念。菜の花でもプチトマトでもいいから買っておけばよかった。まあ一応は重箱を使えたので満足。来年こそは美々しく多種多様な料理を詰めた重箱をもって花見に行くぞー、と毎年思うのに果たせないでいる。来年こそは...

ところで、あまったフキの葉は、細かく刻んで茹でて水にさらしてアクを抜き、水少々と酒・みりん・醤油で煮て、最後に実山椒を加えて佃煮にしてみた。材料から厳選するという実家の母のお手製には比べるべくもないが、春らしいフキの香りのするそれなりにそれっぽい佃煮になった。昔の人はきっとこうやって、その辺に生えてる野草とかあまった野菜とかを利用してご飯のおかずにしてたんだろうなあと思う。実家の母もしょっちゅう海苔とかフキとかで自家製佃煮を作っている。子供のころには買えるものをわざわざ自作する母を奇妙に思ったが、最近私もすっかり佃煮を煮る人になってしまった。

それにしても、春のフキは美味しい。川原をジョギングしてたら、フキが群生しているのが目に付いて困った。(さすがに、ご近所のフキを取って食べるのはちょっとね...という感じがするけど)