豆腐賛歌 Part II

昨年京都に行ったときに、奥嵯峨野の化野念仏寺に豆腐賛歌なる詩が掲げてあった。そのときは、「あらー、豆腐に対する愛情をこんな詩にしちゃって面白可愛い!」くらいの軽い気持ちで見ていたのであったが、その後、なんちゃってながらも菜食生活を送るにつれて、豆腐の偉大さを身にしみて感じることになった。

豆腐はすごい。豆腐のおかげで世界の菜食主義者はかなり救われているであろうと想像に難くない。

まず普通の豆腐だけでも美味しくて栄養満点でいろいろなアレンジの効くというのは万人の認めるところだと思う。冷奴、湯豆腐、チャンプルー、鍋物に入れたり麻婆豆腐にしたり。豆腐はあまり自己主張しない食材だけに、どう料理してもうまい。

それに加えて、揚げた豆腐には、動物性タンパク質の役割全般を代理する能力がある、と思う。精進系の煮物でちょっとコクをプラスしたいときには、とりあえず油揚げを入れるとなんとかなる。もう少し噛み応えが欲しければ、肉の代わりに厚揚げを入れておけば、大抵なんとかなる。我が家では最近、肉じゃがだと思うと代わりに厚揚げとか油揚げとかガンモが入ってるのがすっかり定番になってしまったが、我が家に生息する肉々星人が時折悲しそうな眼差しをする以外には、特に問題は発生していない。黒酢酢豚の豚の代わりに厚揚げを入れるというのも結構美味しいし、トマト味の煮物でもイケる。

もっとシンプルに、油揚げを焼いただけでも美味しい。油揚げをフライパンでカリっと焼いて醤油を絡めたのは、面倒くさがりの私のお弁当定番メニューになっている。また私は生のモッツアレラチーズの消しゴムみたいな食感が苦手なため、我が家でカプレーゼを作るときは代替チーズの代わりに水を切った豆腐が出てくるという始末だ。それにハンバーグの代わりに豆腐を潰したのを焼いたりしてて、もう全般的に、豆腐無法地帯なのだ。


また、厳密に動物性タンパク質を制限した食事では、乳製品を摂取できないので、特に豆のありがたみを強く感じることになる。ミルクやクリームを豆乳で代替したレシピは、玄米菜食教ではおなじみだ。

豆腐をどうかすると、マヨネーズっぽいものとかチーズっぽいものとかもできる。写真は、水を切った木綿豆腐に、白味噌や練りゴマ、レモン汁などを入れてフードカッターで混ぜたもの。材料からは想像がつかないが、白味噌の甘みとレモン汁でほんのりチーズっぽい。ライ麦や全粒粉のパンとか、ベーグルとか、ちょっとモサモサした食感のパンを食べるときには結構いける。もちろん、健康に問題がなければ普通にクリームチーズを食べればいい話だと思うけど、クリームチーズは脂肪分が多くて結構胃に重たい。乳脂肪分を気にせず食べられるライトなペーストで、似たような食感が得られるのはうれしい、と思う。


(左:先日アコルトで購入したライ麦パンと干しイチジク入りのパン、右下:豆腐ペースト、右上:ライ麦パンの豆腐ペーストのせ)

ほかに湯葉や高野豆腐、これらを調理したバリエーションも色々あると思うのだが、奥が深すぎて全然追求しきれない。ほんと、豆腐様様なのだ。