禅 Zen

最近の精進料理マイブームつながりで、日本曹洞宗の開祖、道元禅師の生涯を描いた映画。
冒頭で、精進料理の本に書いてあったエピソードが出てきてちょっと嬉しかった。仏教の正師を求めて宋に行った道元が、荷物を沢山背負った老僧に出会う。「お手伝いしましょうか」という道元に、「いいえ、これは私が仏に授かった典座(台所係)という大切な仕事なので、ゆずるわけにはいきません」と答える老僧。道元は驚いて、「あなたのような方なら、そのような仕事はもっと下のものに任せて、もっとお経を読んだり勉強したりしたほうが仏法のためになるのではありませんか」と言うと、老僧は「なーんにも分かってないなー」 と笑って、行ってしまう。という、日々の作努を修行として大切にする禅の教えを象徴するエピソード。

それはともかく、全体に、心が洗われるような良い映画だった。仏教も宗派によっていろいろな考え方があると思うけれど(そして、それらを語れるほどに良く知らないし、どれかに対して特段の信仰心があるわではないけれど)、南無阿弥陀仏と唱えれば浄土にいける、というお気楽系な宗派に比べて、求道的な禅宗の考え方は、宗教としてより理解できる気がした。
全般に説明的な描写が少なく、細部を注意深く見ていてぎりぎり流れを追える、くらいの押さえた演出もとても良かった。ただ、説明があまりにも少ないので、かなり見る人を選ぶような気がする。仏教用語も殆ど説明なしで使われていて、私も事前に知ってたもの(「喜心・老心・大心」とか)以外はよくわからなかった。登場人物や時代背景に対する説明もあまりないので、教養が必要だなあと感じた。