Der fliegende Holländer @ Dresden

ドレスデンと近郊観光の話を書きたいのだが、どうにもそんな余力の出ないほど仕事に追いまくられる今日この頃である。というわけで、ドレスデンの食べ物の話。

今回の旅では、レストランの選定に非常に困った。旅行したら、その土地の美味しいものを食べたい。普通はガイドブックを見れば(多少観光客向け色は強いとしても)当地のお勧めレストランが載っているし、Webで「ドレスデン 美味しい」とか「Dresden Restaurant」と検索すれば美味しいお店のクチコミ情報がゲットできるものである。しかし購入したドイツのガイドブックでドレスデンは3ページくらいしか紹介がなく、レストランは1軒も紹介なし。Web検索でも、英語と日本語で検索した限りにおいては一向にレストラン評らしいものが出てこないのである。

こういう時は現地の意見だ、ということでホテルのフロントに相談してみた。

私:「この辺で、美味しいお店があったら教えてほしいんですが...」
フロントのおねーさん:「このホテルの中にもレストランがありますよ」


ちなみにホテル内のレストランは(怪しい)イタリア料理店である。


フ:「あと隣接のワールドトレードセンター内にも」


隣接地域にあるのはロシア料理店である。旅行者が美味しい店を知りたいといったら普通郷土料理店を薦めるものではないかと思うが、そんな気配はない。


私:「えーと、この地方の伝統的なドイツ料理が食べたいのですが」
フ:「それだったら、市内の中心地に行けばいろいろレストランがありますよ」


そう言いながらおねーさんは市内地図を広げて、Weiße Gasse と Am Schießhs. という二つの通りをボールペンで丸く囲んだ。


フ:「この道の辺りにはレストランが沢山ありますよ」


決して特定のお店はお勧めしてくれないのであった。

仕方ないので Altmarkt Platz に近い方の Weiße Gasse に行ってみた。聖十字教会の裏手にある、歩行者天国になってる路地で、確かに、10件余りのレストランがひしめく。が、こてこてのドイツ料理らしい店はみあたらず、イタリア料理、スペイン料理ベトナム料理、シーフード、中国料理、フランス料理...という多国籍軍であった。

せっかくドレスデンまで来て、他国の料理を食べたのでは自分に負けた気がする。ましてや、こんな内陸部でシーフードを食べるいわれなどない。そう考えた私は、私の認識しうる限りにおいて、どの国のレストランとも思えない(ということはドイツ料理であろうと思われる)、かつ適度に混んでる一軒のレストランに潜入した。

メニューをもらって、あらかじめ調べてあったご当地料理のリストと見比べてみたが、ドイツの名物料理らしきものが一つも見当たらない。困ってモジモジしていると、お店のおねーさんが英語版のメニューを持ってきてくれた。メニューの最初のページを開くとお店の能書きがいろいろと書いてある。

「当店の店名は『空飛ぶオランダ人』という意味で、伝統的なオランダ料理を各種供します...」

がーん。ドイツ語の読めない悲しさ。しかし辞書で調べると店名の「Der fliegende Holländer」というのは確かに空飛ぶオランダ人なのであった。なぜ飛んでいるのかは理解できないが*1。ともあれ、なかなか思うようなドイツ料理にたどり着けない今回の旅なのであった。

仕方ないので気を取り直してメニューを見ていると、 何箇所かに Matjes という名前が書いてあった。おねーさんに聞いても「魚だ」というばかりで要領を得ない。そういわれると気になるもので、うなぎの Matjes というのを頼んでみた*2


炒めたイモと、ベーコンと炒めたサヤインゲンばかりが大量に盛られている皿である。しかし皿の一角を覆うレタスを取り除くとその下からくるりと丸まった大きなウナギのフィレをスモークしたものが出現した。あとで辞書で調べると、Matjes とは塩漬けの魚という意味のようだ。塩漬けのウナギ(穴子かも)のフィレは肉に疲れた胃袋には嬉しかったが、非常に塩辛かった。そして炒めたイモとサヤインゲンは美味しいが、ひたすら大量でドイツ的だった。オランダ料理が本来ドイツ的なのか、ドイツのオランダ料理だからドイツ的なのかは見当もつかない。今度はオランダに行ってみなければ、と思いつつ、結局非ドイツ料理店で魚を食べている自分が物悲しいのであった。

なおこのあと滞在中、ドイツ料理を含む数軒のレストランで食事をした。どこもそこそこ美味しいのだが、劇的な差がなくて、一様にまあまあ美味しい、といった感じであった。メニューも、ドイツ的料理を選べば選ぶほどおおよそ 肉+イモ+ザウアークラウト という組み合わせになってしまい、あまり変化がない。ホテルのフロントに特定のレストランを薦めるという発想がないのは、そういう事情によるのではないかと勘ぐってしまう。サンプル数が少ないのであくまで仮説である。また、ドイツ国内でも地方によって差が大きいと思う。



*1:2007/10/5追記:店名はワーグナーのオペラで有名な「さまよえるオランダ人」であった模様。英語にすると「さまよえる」が「flying」になってしまうらしい。

*2:ちなみにこのメニューの正式名称は、Aalrauchmatjes mit Speckbohnen und Bratkatroffeln という。Aal-rauch-matjes で「うなぎ・スモーク・塩漬け」、Speck-bohnen で「ベーコン・サヤインゲン」、Brat-katroffeln で「焼いたイモ」という意味になる。mit は英語で言うところの with。ドイツ語は最初全く読めなかったのだが、長い単語は分解すると解読可能ということに気が付いて、ちょっとだけ読めるようになった。それにしても空白もハイフンも入れずになんで全て連結してしまうのか、理解に苦しむところではある。