瀞峡、大日峠を越えて熊野本宮大社へ

熊野川

熊野詣での三日目は、レンタカーで熊野川を遡って、瀞峡(どろきょう)と呼ばれる景勝の地をめざした。
途中、道の駅で一休み。
白い小石の河原に縁取られた熊野川は青く、これもまた遠くへ行くほど蒼く影のようになっていく山々の間をゆるやかに蛇行して、なんともいえず美しいのだった。


瀞峡

瀞峡へは、川の途中の志古(しこ)という場所にある乗り場からウォータージェット船に乗って小一時間ばかり川を上って行く。途中に鮎釣りの釣り人多く、その脇を縫うように進んでいく。水は綺麗でそれほど深くない川底が見えるが、水を噴出して進む特殊な構造のウォータージェット船では、水深50cmくらいのところでも問題なく進めるのだそうだ。
瀞峡は、両岸が川に削られた断崖絶壁で、様々な動物などに見立てた奇妙な形の岩が並ぶ。昨年行った、岩手の猊鼻渓に良く似たコンセプトだが、あちらは手漕ぎの平底舟で船頭さんが舟歌を歌ってくれたりしてなかなか良かったのだが、こちらは船のエンジン音が風情を壊している感じ。しかも、テープで流れる観光案内に若干ほほえましいオヤヂ臭が漂う。松茸岩などという奇岩があるためなのだが...どのような内容かということに興味のある方は、ぜひ現地で直接確かめてください。

折り返し地点近くで河原に上陸して記念撮影というのはこの手の観光の定番。私はソフトクリームや鮎の塩焼きといった屋台は無視して、靴を脱いで冷たい川の水に足を浸してボーっとすることにした。川底の石はちょっとぬるぬるするけど、山歩きで腫れた足に冷たい水がとても気持ちいい。
河原の近くではカヤックを楽しんでいる人も沢山。次は試してみたいなあ。

瀞峡。

川湯

船を降りてから、車で川湯温泉という場所へ。熊野川の支流の川の河原から温泉が湧き出しており、堀ったところがどこでも自分専用の露天風呂になってしまうという場所。河原には多くの人が水着でごろごろしており、てっきり川全体が暑い湯なのかと思ったらそういうわけではなく、川の水は普通に冷たいのだ。しかしちょっと油断して脇の方にある水溜りに踏み込むと、そこは熱くて我慢できないほどの温泉。中間あたりでは湯と水が入り混じって程よい湯加減になっていた。水着で一日中ごろごろしていたら楽しそう。


湯の峰温泉

本日の宿となる湯の峰温泉という場所へ。日本最古の温泉地と言われており、小栗判官判官復活伝説なども残る。小栗判官判官が復活したという伝説のツボ湯は河原の脇の掘っ立て小屋の中にあり、お金を払えば入浴も可能だったがちょっと怖い感じなので覗いて湯に触れるにとどめた。ご利益はあっただろうか。

つぼ湯。

湯の峰温泉の宿にチェックインしてバックパックを背負い、歩いて熊野本宮大社まで行くことにした。地図で見るとほんのすぐ近くだが、大日山という標高300mほどの山を越えていかねばならないため、一時間ほどかかる。山道はまたしても小気味良いほどの上り坂で大汗をかいて、登ったと思うとすぐに下るというコースだった。それにしても世界遺産の中心部だというのにまったく行きかう人に出会わない。大都会からのアクセスが悪いからであろうか。

熊野本宮大社

大日山を抜け、大斎原(おおゆのはら)という昔社殿があった地を超えて長い階段を登り、熊野本宮大社へ。桧皮葺の荘厳な社殿である。神門の内側は撮影禁止で、いっそう厳粛な雰囲気をかもしている。
社殿の前で、ひどく熱心に祈っている一群の人々がいた。その中には若い人も年配の人もおり、賽銭箱の前を外れた、他の参拝客の邪魔にならないような場所で、長いこと手を合わせて熱心に祈っていた。振り返ると神門の前の木陰にもずっと真剣に手を合わせている人がおり、中には地面に膝と手を付いてほとんど泣き出さんばかりの様子。神社であれほど真剣に祈ってる人々を初めて見たのだが、いったいなんの集団だったのだろう。8月6日だったためだろうか。