広島一日観光

厳島神社

日本三景の一つであり、世界文化遺産。広島の中心地から電車で25分くらいのところに浮かぶ宮島の、遠浅になった入り江の上に作られている。潮が満ちている時にはまるで、海の上に浮かんでいるように見える。
私が訪れたときはちょうど干潮で、神社の敷地から海上の大鳥居までずっと歩いていくことができた。足が6本の独特な形をした赤い大鳥居は総天然木で、固定はしておらず、その重みでずしりと砂浜に立っているのらしい。台風が来たら流されてしまわないのかと心配になるが、波の穏やかな瀬戸内海だから大丈夫なのだろうか。

平和記念公園

原爆が炸裂した爆心地にほど近い、川の中州にある。資料館では戦前の広島、戦時中の広島、廃墟となった広島、復興の道をたどる広島、と広島の歴史を丹念に描き出す。
1Fの中央に、2つの町の模型がしつらえてある。一つは、原爆投下前の町の様子。かわいらしい民家や学校、銀行などの建物が立ち並ぶ、きわめて普通の、平和そうな街。もう一つは、原爆投下によって破壊しつくされた街の様子。爆心地半径2kmに渡って、燃えるものはすべて燃えつくされ、破壊しつくされた。わずかに残った石造りの建物も、窓などは吹っ飛び、かすかに骸骨のような構造を見せるのみ。壁一面に大きく、被爆後の広島のパノラマ写真が展示してある。その様子から、爆発のすさまじさを想像できる。
もう一つの建物では、熱線、爆風、放射能など原爆の威力とその被害を分かりやすく説明し、さまざまな歴史の証拠品を展示している。数多く置かれた遺品には持ち主の名前と、その人がたどった運命が細かに説明されている。遠い昔におこった他人ごとではなく、身近なものとして感じさせるための工夫だろう。オーディオガイドではまた、その遺品にまつわるエピソードをいろいろ説明してくれる。ナレーションの半分くらいは、原爆の詩の朗読をライフワークとしているという吉永小百合。悲しさが胸につきささるような朗読。
起こったことを正確に記録し、痛みや苦しみの一つ一つを細部まで丁寧に描き出して、後世に伝えていこうとする強い意志を感じる展示だった。記憶を風化させないように。出口近くのロビーに、多くの中学生が放心したように座り込んでいた。ショックだったんだろうな、と思う。大人の私が見てもショックだもの。そのショックを忘れないで欲しいな、とも思う。

公園内を歩くと、「原爆の子」の像があった。被爆後10年して白血病を発症した貞子という一人の少女が、生きたいと願って毎日折鶴を折った。そのエピソードに共鳴した世界中の人々から送られてきた折鶴が大量に奉納されている。

縮景園

広島駅に程近いところにある、もと広島藩主浅野長晟の別邸として造園されたもの。中央に大きな池と大小の島々を配し、その周りに築山や渓谷が作りこまれ、それらの間を縫うように小道をめぐらした回遊式の庭園で、各地の名勝の縮尺を小さくしたものが作りこまれているらしい。回遊式の庭園が好きな私の趣味にぴったりで、すばらしい庭だった。
各所に置かれた小さな茶室は全て原爆で消失し、現在あるのは復元されたもの。爆心地からは1kmほど離れている。半径2km以内にあるものを焼き尽くしたということなので無理もないのだが、あらためて原爆の威力のすごさを感じる。園内にある巨木のいくつかはあきらかに60年以上経ったもののようであった。ホームページによると樹木も全て焼失したということなので、移植したのだろうか。美しく復元されて今は平和そのものの名園だけれど、ふとしたエピソードにこの街の悲劇の歴史を感じる。