デーニッシュ

先日まで職場に来ていたデンマーク人の学生が、最後にみんなにデンマークの味をご馳走したいといって、パンを買ってきた。東京にある日本人経営のお店だけれど、本場デンマークで修行した職人さんが焼いており、本場の彼から見ても割と納得のお味だったので、ということだった。
買って来てくれたのはいわゆるデーニッシュペストリー各種 (デニッシュ、と発音する人もいると思うが、我が家では「てるてる家族」以来、「でえ〜にっしゅ」とアクセントを置く慣習となっている)。 油が強くて本来あまり得意じゃないのだが、買って来てくれたやつはサクサクとしててとっても美味しかった。
ところでデンマークのパンっていうくらいだから、デンマークのパンは全部「デーニッシュ」なのかと思ったが、そういうわけでもないらしい。普通に食べるパンはもっとしっかりしたシンプルなものらしい。デーニッシュの類はデンマーク語では"Wiener Brød" と呼んで、お菓子の一種に分類されるそうだ。"Wiener Brød" の発音は何度聞いてもよくわからないが、低いくぐもった声で「ヴィノボ」と発するのが一番近い気がする。くぐもった音の感じが北の国っぽい(大声を出すと体温を失うのでくぐもるのではないか...と想像)。 正確には Wiener Brød にも色々な種類があって、それぞれ名前がついてるらしいがよく分からなかった。

デンマークという国のイメージがよく分からなかったが、彼と話したおかげでいろいろ知ることができた。たとえば、デンマークの人は日本人同様、非常に謙虚らしく、頑張って良い成績を取っても決して自慢したりせず「運が良かっただけさ」と控えめなのだそうだ。なんとなく好感度高。彼本人もとてもいいやつで、憎めないキャラだ。宗教にこだわりのない日本人はクールでかっこいい!と強く主張して、聞いてるこっちが照れてしまうくらいの賛美を惜しまないのにはちょっと笑ったけど。

デンマークの食事はシンプルで、焼いた豚肉と茹でたジャガイモという構成が多いらしい。魚は酢漬けのニシンしか食べないらしい(多分に本人の嗜好を反映した意見かもしれないが)。食事中には沢山ビールを飲むが、寒い国なのでワインは産出せず、あまり飲まれないらしい。ニシンの酢漬けを食べた時には、口の中をすっきりさせるために、アクアビットをクイッっと飲むらしい。そして、アクアビットは美味しい。
日本に居る間にすっかり日本食のファンになった彼は、毎日白米を食べ、魚はほとんど食べたことがないといいつつ寿司ばかりか馬刺しだの納豆だのに果敢にチャレンジし、苦手だった箸もいつの間にか使えるようになっていた。「『毎日チキンばっかりの食事』というとデンマークではひどく単調な食事を指すけれど、日本のチキン料理は種類が豊富でそれぞれ独特だから全然飽きない」と笑っていた。

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東京での仕事と観光を満喫して帰った彼は、無事に北の国に着いたそうだ。昨晩、8:59pmにクリスマスビールが解禁になるから友達と飲みに行くんだ、というメッセージをよこした。クリスマスビールはこの時期にだけ飲まれる特別なビールで、普通のビールより色が濃くて強いのだがとても美味しいのだそうだ。いつか行って、味わってみなければ。