コードを読む男

2年ほど前に一緒に仕事していたオーストラリア人の元同僚からいきなり電話が来て驚いた。たまにメールをやりとりしてはいたけど、電話が来たのは初めて。
彼は国に戻って「サイバー・フォレンジクス」の仕事をするんだ、と言っていたのだけれど、実態は企業のWebアクセス記録を調査しアダルトサイトばっかり見ている社員を解雇するお手伝いをする、というような仕事が多いらしくて、「人をクビにする手伝いをするのはもうイヤだ!」と常々言っていたのだった。
聞いたら、無事に別の会社に就職できたらしい。
新しい会社ではウィルス解析の仕事なんかもやっている。
「職場には本当にウィルス解析できるハッカーがいるんだぜ」
なんて言ってるので、「どのくらいシリアスなハッカーなの?」と聞いてみた。レベルはいろいろあるだろうが、本当にウィルスを解析できる超一流のスキルがある人は世界中でも数十人くらいしかいないと言われているのだ。
「むちゃくちゃ一流だよ! 俺の同僚は、16進数のバイナリダンプを見て、ウィルスが何やってるのか分かるんだぜ!」
並みのプログラマはCで書かれたプログラムを見て、何をしているのか解析する。もっとすごい人は、機械語命令に変換されたのを見て何をしているのか解析できるが、機械語命令というのは既に意味不明なアルファベットと数字の羅列(にしか普通の人には見えない)ので、これでも十分すごい。機械語命令は最終的に、コンピュータに理解できる単なる数字の羅列に変更される。これを理解するには、数字の羅列と機械語命令の対応が、完全に頭に入っていないとムリで、私もこれまでそんな人は見たことがない。
世の中にはすごい人がいるもんだなあ。