ふくろう亭

那覇に着き、マラソンの出場登録を済ませて、夕飯はあらかじめ調べてあった家庭料理屋さんへ。今回のテーマは、「観光客の行きそうにないジモティな店」である。

そのテーマで見つけたお店は、カウンターに6席、テーブルに8席ばかりのこじんまりとした小さなお店。店主らしいおばさまと、その母君らしいおばあの二人でやっている。

まずは突き出しのパパイヤいりちー。優しい味。

メニューに単に「豆腐」となっているのを注文したら、デフォルトでスクガラス(アイゴの稚魚の塩漬け)が乗ったのが出てきた。私、実はスクガラスはヌルっとした皮やゴリゴリする小骨の食感がちょっと苦手なのであるが、ここのは美味しく食べられた。なにより、塩味の効いた島豆腐が美味しい。

店名になってる、ふくろうの図案のコースター。箸にもふくろうの絵が。この他、店内のあちこちにふくろうの姿が見られるのであった。沖縄にもいるのね、ふくろうって。

自家製だというジーマミー豆腐 (ピーナツで作ったゴマ豆腐のようなもの)。ねっとりした食感とピーナツの香りがすばらしく美味しい。

にんじんのシリシリ。千切りにした人参を、卵と一緒に炒めてある。実際は包丁で切るのではなく、「シリシリ」という千切り器で細切りにするのでこの名があるそうだ。シリシリすると、断面が荒くなって味がしみこみやすく、それがまた美味しいらしい。(という話は聞いたことあれど、「シリシリ器」の実物は見たことがないのだが)

もずくの天ぷら。もずく天というと、もずくの入った塩味のいびつなドーナツをウスターソースで食べるちょっとジャンクなB級メニューだとばかり思っていたのだが、ここのは違った。やわらかいモズクが、最小限の衣をまとって形作られて、外側カリっと、中トロリンと揚げられているのを、塩を振って上品に食べる。すごく美味しい、思い出しても垂涎ものの、A級品のもずく天なのであった。

ハンダマの和え物。ハンダマというのは沖縄の野菜で、表が緑、裏が紫色をしている。若干の苦味があって、茹でるとぬめりがでてくる。これをさっと茹でたのを、ツナ缶とともにあえてある。「茹ですぎるとぬめりが出過ぎるし、色が抜けちゃうので、茹で加減が難しいのよ」とは、おばさまの言。また、「血液がさらさらになるのよ」とも言っていた。

三枚肉のみぞれかけ。このあたりからまた、「なんぼのもんじゃい玄米菜食」モードに。


注文してないのに出てきたその1。自家製の肉味噌。売ってるのは甘ったるくて苦手だが、これは美味しかった。

注文してないのに出てきたその2。大根のウコン漬け。「体にいいのよー」とおばさま。かなりの健康志向の模様。

チキナー(島菜)のチャンプルー。ほんのり苦味のあるチキナーを、少量のお出汁と一緒に炒めていて、上品な味。豆腐も、外側がカリっとするまで炒めた後でお出汁を吸わせているようで、香ばしいのにジューシー。チャンプルーって作り方次第でこんなに上品にできるのね、と感動。

注文してないのに出てきたその3。自家製のちんすこう。ほんのり塩味が効いて今流行の塩スイーツ状態なのだが、歯ざわりもほろっとして口の中で崩れるようで、空港などでお土産に買う普通のちんすこうとはまったくの別物なのであった。


普通は外食すると、味が濃かったり野菜が少なかったりで疲れる感じがするのだが、この店ではまったくそういう感じを受けなかった。毎日食べても飽きない、優しい家庭料理の味。全体に、自家製にこだわって、身近な食材やちょっと珍しい食材を、きっちり美味しく料理して食べさせてくれるお店なのであった。雰囲気も非常にアットホーム。ばくばくと食べていると、おばさまが「美味しい?」と聞いてきたり、食材や健康に関する注釈を入れてくれたりするのが、なんとなく自分の実家で食べてる気分になる。お酒(泡盛)も種類が多く、水や氷にも凝ってたのが好感度高し。